2024年研究発表会:講演プログラムと発表概要

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11月2日(土)

特別講演(14:20-16:00,F室)

  • 開会挨拶  一般社団法人日本太陽エネルギー学会 会長 若尾真治
  • 特別講演Ⅰ:  Carbon neutrality and solar heat pump for the industrial sector 韓国太陽エネルギー学会(KSES) 会長 パク チャンデ
  • 特別講演Ⅱ: 北海道の近代建築から〜文化財を中心として〜 NPO法人歴史的地域資産研究機構 代表理事/一般財団法人北海道文化財保護協会 理事長/一般社団法人日本民俗建築学会 会長/博物館網走監獄 館長/北海道大学 名誉教授 角幸博

セッションA1(9:30-10:50):太陽光発電システム(発電量予測)

1   晴天指数によるクラスタリングとニューラルネットワークを用いたPV発電量のスポット内最低値推定
    ※中田湧也,崔錦丹,植田譲(東京理科大学),宇都宮健志,佐々木潤,岡田牧,山口浩司(一般財団法人 日本気象協会)
     本研究では電力システムにおける調整力確保に向け、太陽光発電システムの短時間変動を評価するため、気象データから推定した5分粒度の発電量から晴天指数を基にx-means法でデータをクラスタリングし、その後、各クラスタ内でニューラルネットワークを用いて1分粒度の発電量の30分内における最低値を推定する
2   パラメータアンサンブル予測を用いた 翌日の日射量予測大外し予見 ~WRF Ver.3とVer.4との比較~
    ※加藤丈佳,占部千由(名古屋大学),宇野史睦(日本大学)
     筆者らは,オープンソースの数値気象予報モデルであるWRF(Weather Research and Forecasting)を用いて,物理スキームの組み合わせが異なる複数の予測値のばらつきを用いた日射量予測大外し予見手法を開発している。本発表では、WRFのVer.3を用いる場合とVer.4を用いる場合について、大外しの検出力の違いを比較した。
3   多層雲流を考慮した周辺観測による対象点日射量予測の検討
    ※脇坂颯,東城友都,坂東隆宏,滝川浩史(豊橋技術科学大学),平塚元久,真木志郎(株式会社エイム)
     周辺の雲が対象点に向かって流れる場合には,その雲影による日射変動は時間遅れを伴い対象点でも生じます。ここで雲は多層となる場合もあり,その時に地上に届く日射は各層の雲による変動が組み合わされたものとなります。そこで本研究では,そのような多層雲流の場合も考慮した周辺観測による日射量予測手法についての検討を行いました。
4   機械学習を用いた太陽光発電所の発電量予測・劣化診断の高精度化
    ※森豊,藤本卓也,村上伸太郎,原田真宏(大和ハウス工業株式会社)
     大量導入が進む太陽光発電を今後主力電源として活用していくには、発電量の不確実性や発電機会の損失の抑制が重要である。そのためには、多様な太陽光発電所に対する高い精度の発電量予測や、従来のPR値では判断困難な事例もあった汚損や劣化の早期検知が必要である。本論文では、これらの課題を解決すべく開発した機械学習による太陽光発電の発電量予測及び診断方法について、実物件のデータを用いて有効性を評価した結果を示す。

セッションA2(11:00-12:20):太陽光発電システム(マイクログリッド)

5   Impact of Load Profile Variability on Optimal PV and BESS Capacities
    ※YASH PANDEY,松尾廣伸(静岡大学)
     タンザニアの村に,ディーゼル発電機(DG)をベースとし太陽光発電(PV)と蓄電システム(BESS)併設したアイランドマイクログリッドを導入することを想定し,HOMERソフトウェアを用いて,日変動率および時間変動率を0~100%まで変化させて、PVとBESSの最適容量を調べた。その結果、0~70%までPVはおよそ同じ値を保ち,BESSは緩やかに上昇するものの,70%を超えると両者共に著しく減少した。
6   マイクログリッドにおける損失の実験的把握とそれを用いたシミュレーション精度向上
    ※岡村遼斗,野田靖仁,松尾廣伸(静岡大学)
     大学構内に構築した、ディーゼル発電機(バイオディーゼル),太陽光発電および蓄電システムからなる小規模な実験用マイクログリッドを用いて、タンザニアの農村部を想定した模擬負荷を運用させ、損失の実験的把握を行った。変換及び配線損失をコンバータ効率を17%低下させて模擬することで、シミュレーション精度が向上することが明らかとなった。その結果、正味現在コストは15%上昇した。
7   直流マイクログリッドシステム 電力融通におけるシミュレーション
    ※平田陽一(公立諏訪東京理科大学)
     再エネの出力抑制は、年々増加し、原発5基分にもなるとの報告もある。他方、出力平準化として期待される蓄電池は、まだ容量密度が低く、コスト高である。住宅1軒独自で解消しようとすると、とても大容量の蓄電池が必要である。これを解消するには、ローカルな電力送電ループを引いて、地域で電力を融通することが考えられる。それにより、蓄電池容量の平準化が可能であるかを、シミュレーションによって、確認した。
8   Optimization of a Hybrid PV-Diesel Minigrid System: A Case study of Vimtim-Mubi, Nigeria
    ※Julius Agaka Yusufu,Dei Tsutomu(足利大学)
    This study undertakes the development of an optimal PV-diesel hybrid power system tailored to the specific energy landscape of Muvudi-Mubi, Nigeria, utilizing real-world solar radiation, and diesel cost data. Employing HOMER simulation, the research meticulously assesses the technical and financial viability of this hybrid configuration. Additionally, a rigorous performance comparison is conducted between the PV-diesel system and the conventional grid-connected alternative, offering crucial insights into the potential advantages and economic feasibility of adopting hybrid renewable energy solutions in regions grappling with energy access and reliability challenges, with implications for sustainable electrification efforts in similar communities worldwide.

セッションB1(9:30-10:30):地域マイクログリッド

9   いすみ市地域マイクログリッドの現状
    ※宮本裕介,長谷川匡彦,京藤毅(株式会社関電工)
     株式会社関電工は、千葉県いすみ市にて系統線を活用する「地域マイクログリッド」を2023年2月に運開した。本稿では、運開後1年以降経過したいすみ市地域マイクログリッドの現状について報告する。また、過去に実施したマイクログリッド時の系統事故時の挙動に関する技術検証結果の一部についても報告する。
10   地域での太陽光発電普及の課題と脱炭素先行地域
    ※松原弘直(特定非営利活動法人 環境エネルギー政策研究所)
     日本国内でも、ゼロカーボンシティ宣言する地方自治体の数が1100以上に達したが、地域の脱炭素化に向けたロードマップの策定はまだまだ途上である。その中で、脱炭素先行地域として73の提案が選ばれて、地域での再生可能エネルギー100%の実現に向けて動き始めている。そこで、脱炭素先行地域での事例や地域での太陽光発電の普及状況を分析し、普及に向けた課題や方策を検討する。
11   機械学習とGISを連携した都市の余剰エネルギー可視化ツールの開発
    ※呉濟元,村田泰孝(崇城大学),洪銅基,姜在元(九州大学)
     分散型エネルギー社会は、再生可能エネルギー供給のリスクを分散し、二酸化炭素排出量を削減することによって実現できる。本研究では、機械学習を用いて都市の余剰エネルギーを算出し、GISと連携して都市の余剰エネルギーを可視化する。また、都市の余剰エネルギーをEV充電と組み合わせ、分散型エネルギー社会の実現に向けたケーススタディを検討する。

セッションB2(10:40-12:20):ZEB/ZEH(実測評価)

12   平常時と非常時をシームレスにつなぐオフグリッド診療所に関する研究 その1 研究概要と冬季予備実測結果
    ※森脇心,青木達真,佐藤理人,木多彩子(高知工科大学)
     高知県黒潮町にある平常時には診療所兼保健センターとして使用され、災害時には医療救護所や災害対策支部となる地域拠点施設を対象に、災害時にも電力を途絶させないオフグリッド型施設とするための研究を行う。本報では、対象施設の利用実態と冬季における温熱環境の把握を目的とした予備実測を行った結果を報告する。
13   平常時と非常時をシームレスにつなぐオフグリッド診療所に関する研究 その2 夏季実測結果
    ※青木達真,森脇心,佐藤理人,木多彩子(高知工科大学)
     高知県黒潮町にある平常時には診療所兼保健センターとして使用され、災害時には医療救護所や災害対策支部となる地域拠点施設を対象に、災害時にも電力を途絶させないオフグリッド型施設とするための研究を行う。本報では、夏季における屋内外温熱環境及び電力消費量の実測を行った結果を報告する。
14   宮城県川崎町のエネルギー地産地消を目指す宿泊施設の性能評価 第2報
    ※水澤隆良,武樋孝幸(長岡工業高等専門学校),中安祐太(東北大学)
     ZEHを目指すうえで、夏や冬の空調設備の消費する電力が大きな問題である。この問題の解決策として空調設備を少ない消費エネルギーで済ませ、家の中を快適な温度に保つことである。そこで必要となってくるのが蓄熱、断熱といった家の性能である。今回、宮城県川崎町にある百の宿の性能を設計値と実測値から分析したので発表する。
15   パッシブデザインを活用した木造戸建て住宅のエネルギー性能評価に関する研究 (第2報)パッシブデザインと太陽光発電によるエネルギー自立性の関係
    ※持田正憲(武蔵野美術大学),西川豊宏,本坊雅樹(工学院大学)
     パッシブデザインを活用して設計された木造戸建て住宅である伊勢原パッシブハウスにおいて、設計段階におけるパッシブデザイン(断熱性能、開口部、日射取得・日射遮蔽)の検討評価と実住居下におけるエネルギー消費量と太陽光発電によるエネルギー自立を評価することで、パッシブデザインとエネルギー自立の関係を明らかにする
16   ZEB認証の都心部建物におけるエネルギー消費実態と 太陽光発電システムの発電量について
    ※宋城基(広島工業大学)
     本研究は、大阪市内にあるZEB認証を受けた建物の運用段階において、ZEBが達成されているかどうかの検証と共に省エネ評価項目の改善点について検討した。また、ZEBの対象項目外のエネルギー消費項目についても解析し、これらの項目を含めたZEBの評価も行った。さらに、隣接する周辺建物による日陰を考慮した太陽光発電システムの発電量についてシミュレーションにより検討を行った。

セッションC1(9:30-11:10):断熱・パッシブ・温冷感Ⅰ

17   里山環境下にある古民家を改修した木造建築における温熱環境評価 (第2報)広縁の熱的緩衝空間としての役割
    ※本坊雅樹,西川豊宏(工学院大学),丸谷博男(株式会社エーアンドエーセントラル),持田正憲(武蔵野美術大学)
     本研究は、東京都町田市の里山環境下にある古民家において、既存の建材や建具 を極力再利用して改修した木造建築を評価の対象に、改修後のコンクリート基礎 の蓄熱と全熱交換器を併用した換気システムの熱的な特性と温熱環境を実測デー タに基づき評価するものである。本報では、換気経路の温湿度変化から、広縁を 給気経路として活用した換気システムの温熱環境の推移を報告する。
18   ヒトに「心地よさ」をもたす光環境と想像温度の季節特性 -秋季における実験-
    ※村山つばさ,斉藤雅也(札幌市立大学)
     ヒトに「心地よさ」をもたらす光環境は、夏季は色温度が高い「涼しさ」感、冬季は色温度が低い「温もり」感をヒトがイメージできる環境とされる。その成立条件は、ヒトの温熱感覚の要素が含まれていて、季節特性を有すると考えられる。これまでヒトの想像温度は、外気温に基づく季節特性を有することが明らかになっている。本研究では、秋季においてヒトに「心地よさ」をもたらす光環境と想像温度の関係を明らかにした。
19   高齢者熱中症予防のための体験型住まい方支援プログラムの試行と効果検証
    ※高橋達(東海大学)
     本稿では、高齢者支援センターと共同で、熱中症予防のための住まい方支援プログラムを試行し、その教育効果を検証した。その結果、以下の結果が得られた。1)要支援者の大多数は、住まい方援により、WBGTが大幅に低下した。2)住まい方支援プログラムを体験することにより、エアコンの使用を含む高齢者の住まい方が3つのグループ(パターン)に変化した。
20   室内外放射環境の簡易評価手法に関する研究
    ※酒井孝司(明治大学)
     屋外や室内空間の温熱快適性を検討する際に,放射環境の評価・把握は,重要な項目のひとつである。グローブ球に相当する単位球面上に,周辺の地物を投影してその面積(立体角)を簡易に求めることができれば,地物が評価点に及ぼす影響を簡易に評価可能と思われる。そこで,本研究では,屋外放射環境の簡易評価手法の開発を目的に,周辺の地物を単位球面に投影して面積を求める方法について検討を行う。
21   エントロピー収支構造が明らかにする熱中症発症家庭の人体・建築熱環境の特性
    ※深田悠平,高橋達(東海大学)
     冷房と非冷房の住宅熱環境・人体についてエントロピー解析を行い、以下のことを明らかにした。1)JISでは熱中症発症の条件を深部体温38℃以上としているが、エントロピー収支解析では、人体深部の積算エントロピー生成量が健全時の69%と大きく不足している。2)人体から外構まで多層をなすサブシステム群のいずれも適正なエントロピーの生成が必要であるため、サブシステム自身のエントロピーの生成と廃棄をコントロールする必要がある。

セッションC2(11:20-12:20):再生可能エネルギーの制度設計

22   固定価格買取制度における太陽光発電の卸電力市場への影響と経済的便益の評価
    ※福家信洋(神戸大学),大橋和彦(一橋大学)
     太陽光発電(PV)の電力需要に対する導入量が多い九州地域を対象に、電力市場の供給構造モデルを用いてPV電力の価値を定量的に評価した。PV導入が電力価格に与える影響とFIT制度による消費者負担を比較し、消費者の経済的便益を明らかにする。その結果、電力価格と需要が高い場合、特に夏季において消費者の経済的便益が増加することが示された。これらの評価手法と結果は、政策設計の改善に役立つ重要な知見であると考えられる。
23   地域脱炭素時代における再エネ非化石価値の流出問題
    ※伊高健治(弘前大学)
     地球温暖化を抑止するために、地域脱炭素という地方発のCO2排出削減努力が進められている。しかしながら、再エネ電力は、電力送電網に接続することによって電力価値と非化石価値に分離され、地球温暖化抑止にとって重要な非化石価値が再エネ創出地域から流出している問題がある。この問題は、FIT・FIP制度による弊害であり、資源ナショナリズムにならないためにはどうすべきかを考察する。
24   再エネと既存省エネ技術普及による基礎自治体の脱炭素と光熱費削減・経済効果
    ※歌川学(産業技術総合研究所)
     公式な排出統計のない基礎自治体における太陽光・風力などの再エネ普及と、省エネ対策の中で既存技術の更新時の省エネ機械・車・断熱建築普及、この両者による2030年と2035年の基礎自治体の排出削減対策と効果、対策による光熱費削減、これと設備投資受注による経済効果について報告する。

セッションD1(9:30-10:50):太陽集光・集熱利用

25   次世代太陽熱発電のためのCaMnO3系ペロブスカイトの化学蓄熱性能評価と焼結体の作製
    ※栁沼佑多,小林健人,籏町剛,郷右近展之(新潟大学)
     集光型太陽熱発電が欧米や北アフリカ等の日射量が豊富なサンベルト地域ですでに実用化されている。熱エネルギー貯蔵方法の一つである化学蓄熱は顕熱貯蔵と、金属酸化物の酸化-還元反応を利用した化学蓄熱を利用し、蓄熱/放熱する仕組みである。本研究では、600℃以上の次世代太陽熱化学蓄熱システムの構築を目的として、CaMnO3系ペロブスカイトの粉体における化学蓄熱性能と評価を行い、粉体から焼結体の作製過程について発表する。
26   ドープセリアを用いた二段階水熱分解サイクルに関する研究
    ※後藤慶祐,Nur Shazana Suhaila,宮本大輝,Selvan Bellan,児玉竜也(新潟大学),黒澤和浩,小塚久司(日本特殊陶業株式会社)
     地上反射鏡による太陽集光システムを用いて、太陽集光を反応媒体となる金属酸化物の発泡構造体に直接照射して加熱し、高温の二段階水熱分解サイクルで水素を製造するソーラー反応器が開発されている。本研究では熱耐久性に優れたセリアおよび他金属ドープセリアを反応媒体とした発泡体反応デバイスを小型で作製し、疑似太陽集光を発泡体に照射し、水熱分解サイクルの反応活性を検討した。
27   太陽熱とZnの金属酸化反応を用いた水素生成に関する研究
    ※島田健太,秋元雅翔,木村元昭(日本大学)
     太陽光をフレネルレンズで点集光し,得られた高温熱源を利用して金属水熱分解反応を用いて亜鉛と水から水素を生成し,同様に太陽熱を用いて還元反応により酸化亜鉛から亜鉛を還元するサイクルを考案,装置を試作し実験を行った.
28   持続的な水素生成に向けた酸化亜鉛の還元に関する研究
    ※武田諒太,木村元昭,秋元雅翔(日本大学)
     水素を持続的に生成することが出来れば昨今の問題とされているエネルギー資源不足に貢献できると考え本研究を進めています。水素の生成方法として亜鉛を酸化させて生成する方法があります。そこで水素の生成過程で生じた酸化亜鉛を再び亜鉛へと戻すことが出来れば理論上持続的に水素を生成できると考えています。私の研究では酸化亜鉛の還元方法を新装置や不活性ガスなどを用いて研究を行っています。

セッションD2(11:00-12:20):PV/T・太陽熱集水利用

29   PV/Tソーラーパネルと太陽熱集熱器及びエジェクタ冷凍サイクルを組み合わせた住宅用システムに関する研究
    ※里見麻佑子,寺島康平,長井達夫(東京理科大学),笹原滉大,國吉直,小嶋満夫(東京海洋大学)
     太陽光発電と熱利用を同時に行うことのできるPV/Tソーラーパネルで集熱した太陽熱を夏期に冷房として利用する方法として、低温の熱源から冷熱を得るエジェクタ冷凍サイクルとPV/Tソーラーパネルを組み合わせた住宅用システムの研究を行っている。本研究では、このシステムをより有効に活用するために、集熱量の増加を目的として太陽熱集熱器を加えたシステムのシミュレーションを行い、有効性を検討した。
30   PV/Tソーラーパネルと躯体一体型蓄熱を導入した住宅用エネルギーシステムの通年利用に関する研究
    ※關真弥,寺島康平,長井達夫(東京理科大学)
     太陽光発電と太陽熱集熱を同時に行うことのできるPV/Tソーラーパネルは低温での集熱によって集熱・発電効率が上がるが、暖房利用には相当量の貯湯槽が必要となる。そこで冬季に躯体内部の床下に蓄熱し床暖房利用を行い、夏季には対流式空調を用い冷蓄熱を行うシステムを検討した。このシステムの室内環境・省エネ性能について報告する。
31   イオン風を用いた管外面への凝縮促進効果の数値解析による検討
    ※大竹万葉,藤本雅則,福留功二(金沢工業大学)
     開発途上国をはじめ将来的に世界規模の飲料水確保が懸念されておりその水の確保が不可欠である.水資源の偏在を防ぐため省電力での水製造技術が重要である.その中で再生可能エネルギーを用いた太陽熱蒸留システムが注目されている.本研究では,その付加技術による効率的な製造を図るため管外面へのイオン風による凝縮促進を考えた.数値解析の結果,天井板下面と凝縮管上端部の距離が凝縮量に影響を与えることが明らかになった.
32   ペルチェ素子を用いた大気中水分の凝縮回収装置の実験および部位毎の理論的検討
    ※馬越康平,大西慶一朗,松尾廣伸(静岡大学)
     ペルチェユニット、集熱器シリカゲル槽、模擬蓄熱槽から構成される大気中水分凝縮回収装置を作成して実験を行い、それぞれの部位毎に動作の理論的検討を通してモデル化を行った。モデルの妥当性の検証ではそれぞれの部位で温度の推定値が実測値に近い傾向を得ることができた。凝縮水量の推定においては相対誤差を25%程度にまで改善し、模擬蓄熱槽では出口温度の誤差-1%から2%と非常に高い精度で近似することができた。

セッションE1(9:30-10:50):バイオマス発電Ⅰ

33   小規模店舗・事業所における木質バイオマスボイラーの経済性
    ※古俣寛隆(札幌市立大学),吉田貴紘,柳田高志,久保山裕史(森林総合研究所)
     木質バイオマスの普及を図るためには、化石エネルギーに対して木質バイオマスエネルギーが経済的に優れている必要がある。森林総合研究所と道総研林産試験場が共同で開発した熱供給バイオマスボイラー経済性評価ツールを用いて、小規模店舗・事業所における木質バイオマス温水ボイラーに関する検討を実施した。
34   バイオマスボイラの排熱を利用した木質チップ乾燥装置の開発
    ※牧健斗,藤本雅則(金沢工業大学)
     バイオマスボイラの課題として,①燃料となる木質チップの高含水率による燃焼困難や発熱量の低下,②稼働中の排熱による熱効率の悪化が挙げられる.本研究では,バイオマスボイラの燃焼室外部にソーラーチムニーを模した乾燥装置を設置し,バイオマスボイラから排出される熱エネルギーを利用して自然対流を生じさせ,木質チップの含水率を低下させることを目的とする.これにより,木質チップを短時間で乾燥させることができた.
35   バイオガス発電と太陽熱集熱器による統合システムの最適化に関するエネルギー分析
    ※伊藤鈴華,森太郎,大沢飛智(北海道大学)
     本研究は、寒冷地域におけるバイオマス発電と太陽熱温水器のエネルギー効率を最適化するため、外気条件と積算熱量の関係性を解析したものである。外気温、日射量などの外気条件が、積算熱量にどのような影響を与えるか検討を行った。
36   バイオマスガス化発電の性能とエネルギー収支に関する研究
    ※出井努,Julius Agaka Yusufu(足利大学),Hossen Iddi Kayumba(TRDO)
     本研究では、開発途上国の未電化地域への導入を目指した発電用バイオマスガス化システムの検討を行った。足利大学が開発したU字型ガス化システムを使用し、タール生成の影響を抑制するためにロータリーエンジンを採用した。木質バイオマスを燃料として、上蓋の開閉による2つの操作モードで性能を評価した結果、ガス化効率は最大79.8%、エネルギー変換効率は最大9.4%を確認した

セッションE2(11:00-12:20):バイオマス発電Ⅱ

37   青色有機薄膜太陽電池を用いたオイル産生藻類のEPRに関する検討
    ※小口隼人(公立諏訪東京理科大学)
     穀物以外のバイオ燃料として、油を生産する微細藻類が注目されている。微細藻類を原料としたバイオマス燃料の製造時の課題として、培養工程での投入エネルギーに対し,得られるエネルギー比、エネルギー収支比(Energy Profit Ratio,以下EPR)が小さいことが挙げられる。本研究では、有機薄膜太陽電池(以下OPV)の光透過性及び意匠性に着目し、微細藻類の光合成に必要な光を通す青色 OPVを用いて培養と発電の両立を図ることで、EPRの向上を目指す。
38   集合住宅へバイオガス発電を導入するための前処理方法および運転条件の検討
    ※久保田謙三,西野優希,藤本卓也,原田真宏(大和ハウス工業株式会社)
     新築建築物の一次消費エネルギー削減のため、断熱・省エネ・創エネによる対策が進められている。創エネは太陽光発電が広く導入されているが、都市部の集合住宅では屋根面積が小さいため、設置容量が限定的であった。本研究では、太陽光発電と併用できる創エネ設備としてディスポーザー排水を利用するバイオガス発電に着目し、ガス化装置の小型化を実現するための前処理方法および運転条件について検討した結果を報告する。
39   水素結合の解裂を伴う雲梯型ラジカル連鎖反応によるセルロースの燃焼反応
    ※塙藤徳(森林総合研究所)
     バイオマスの燃焼利用に際しては健康障害の原因となる煤や COの発生を抑制した燃焼方法が重要であるが、主要成分であるセルロースの燃焼機構に関する報告はほぼ無い。セルロース火炎色はロウソク火炎に生じる C2の生成を予想させないが、後者の燃焼ではビラジカル性の酸素分子による水素引抜きにより反応が開始される事から、前者の場合も同分子による6位水酸基の水素引抜きに始まるラジカル連鎖反応による分解反応が導かれた。
40   ソーラーマッチングにおける波長変換シートを用いた発電量及び作物栽培の評価
    ※飯室耀平,渡邊康之(公立諏訪東京理科大学)
     食料不足の解決策としてビニールハウスを活用したスマート農業が期待される.その電力源としてビールハウスに有機薄膜太陽電池(OPV)を設置し,その下で作物を栽培するソーラーマッチングの活用が期待される.しかし,OPVの透過率によっては作物栽培に影響が出ることが懸念される.そこで本研究では波長変換シートを活用し,作物に有効な波長帯の光を増幅させ,ソーラーマッチングの実現を目指す.

ポスターセッション(13:20-14:10)

P1   高効率カーボン系多層多孔質ペロブスカイト太陽電池のためのRbCsCH(NH2)2PbI3を使用した前駆体溶液の検討
    ※大下舜介,塩木貴也,泉本直也,伊藤省吾(兵庫県立大学),辻流輝(筑波大学)
     カーボン系多層多孔質ペロブスカイト太陽電池の光吸収材料として一般的に用いられるCH3NH3PbI3は先行研究での報告から5-アミノ吉草酸よう化水素酸塩を添加することで多孔質電極内での良好な結晶充填が達成される.しかし,この系の太陽電池は電圧掃引速度によってIV特性が大きく変化し,測定条件によっては性能が過大評価される.本研究では代替材料RbCsCH(NH2)2PbI3を用いてその過大評価を抑制させると共に,高効率化のために前駆体溶液の検討を行った.
P2   Enhancing the accuracy of deep learning models for solar irradiation prediction
    ※党柏舟,劉洪芝,田邉匠,長野克則,葛隆生(北海道大学)
     Improving the accuracy of deep learning models for solar radiation prediction is crucial for the optimization of home energy management system (HEMS). This study proposes a new deep learning model based to better perform open-loop prediction. The k-means method is introduced to classify the training data. The prediction results and performance of the model will be evaluated using solar radiation data from regions such as Sapporo in different weathers, and compared with long short-term memory (LSTM) based model and other hybrid models.
P3   営農型太陽光発電シミュレーション開発に向けた全天カメラによる散乱光評価
    ※外崎滉大郎,舘山聖真,伊髙健治(弘前大学)
     農業と太陽光発電の共存をめざす営農型太陽光発電では、発電量予測に加えて育成する作物の収量予測が重要である。太陽光パネルによって発生する影の振る舞いを見積もるには、平行光と見なせる直達光だけでなく、散乱光の評価が重要である。散乱日射計などのような可動部をもつ観測は積雪地域では容易ではないため、可動部のない全天カメラを使って評価することを試みた。
P4   積雪寒冷地の高性能住宅における「住みこなし」をひきだす半屋内外空間とその熱環境―札幌近郊の住宅を事例として―
    ※大坂美保子,斉藤雅也(札幌市立大学)
     新築住宅の断熱・気密化が完了した北海道において、高断熱・高気密化によりできた強固な熱的境界は冬に快適な室内環境をつくる一方、内外の分離によりヒトの行動を制限し、多様化する生活スタイルに柔軟に対応できているとは言い難い。温度ムラがない快適な室内環境を実現した上で、住宅に組み込まれた熱的な半屋内外空間は、高性能住宅ならではの「住みこなし」をひきだす空間として活用できる可能性がある。
P5   札幌市円山動物園「オランウータンとボルネオの森」の室内気候デザイン
    ※斉藤雅也,本田直也(札幌市立大学),鈴鹿新平(札幌市),松本渉(株式会社大建設計)
     本研究は、札幌市円山動物園に開館した動物舎「オランウータンとボルネオの森」の室内気候デザインについて解説したものである。建築形式はRC造の外断熱工法、暖房設備は放射式のパネル・柱暖房、換気設備としてアースチューブによる外気導入、置換換気システムを採用した。室内でも地植えの植栽が生育できるようトップライトおよび自然光照明、散水が間欠的にできる設備を導入した。
P6   住宅用太陽光発電システムの導入実態の検討
    ※石田恭明,吉田匠,工藤大樹(京都大学)
     これまで、日本の太陽光発電システムの受容に関する研究は特定地域を対象としていた。
本研究では、人口10万未満の小都市および町村を対象としたクロスセクションデータ分析を行う。市町村サイズでデータを扱うことで、自然環境・居住形態・経済指標を含めた分析とした。
P7   Enhancing MAPbI₃ perovskite solar cell performance and stability by additive engineering
    ※Haoyu Ding,Hiroo Suzuki,Takeshi Nishikawa,Toshihiro Watanabe,Yasuhiko Hayashi(岡山大学)
     MAPbI₃ペロブスカイト太陽電池の大気中の安定性と効率向上を目指し,光電変換層にグラフェンベースの添加剤導入することで,光電変換効率(PCE)が8.15 %から12.18 %に,曲線因子(FF)は0.5から0.62へと向上した.さらに,大気安定性も大幅に改善された.太陽電池特性の向上は,添加剤導入により,相MAPbI₃結晶構造がPCEの高く安定な相へと転移することが分かった.

11月3日(日)

 100%再生可能エネルギー部会特設セッション (13:00-14:30,F室)

RE1   ゼロカーボン北海道の取組について
    木村重成(北海道経済部ゼロカーボン推進局 新エネ・地域脱炭素担当局長)
     
RE2   北海道における再エネ/蓄電池を利用した取組み
    岡田浩一(日本ガイシ株式会社NV推進本部CN事業開発エネルギーソリューション部長)
     
RE3   北海道,Carbon Neutrality達成の提言と課題
    長野克則(北海道大学大学院 工学研究院環境工学部門 教授)
     
RE4   総合討論
     
     

セッションA3(9:10-10:30):太陽光発電システム(応用技術Ⅰ)

41   需給調整市場に参入するためのスマートコミュニティの電力運用方法の研究
    ※尾崎武尊,川崎憲広(東京都立産業技術高等専門学校)
     近年、太陽光発電(PV)、蓄電池、電気自動車(EV)の導入増加が進み、これらを地域活用電源として利用したスマートコミュニティ(SC)が注目されている。また、SC構成機器による需給調整能力を活用することでSCが需給調整市場へ参入し、設備費用を回収する運用が考えられる。そのため本研究では、市場参加時の電力運用を混合整数計画法により最適化させ、SCの経済性と電力需給調整の可能性を定量的に示す。
42   PV大量導入時における送電線の停電作業計画のための過酷条件分析
    ※鈴木雅之,加藤大樹,森友輔,若尾真治(早稲田大学),山嵜朋秀,豊嶋伊知郎,犬塚直也(東芝エネルギーシステムズ株式会社)
     送電線の停電作業計画では過酷な負荷状態の適切な想定が必要である。近年、太陽光発電等の再生可能エネルギーが系統に大量導入され、電源の大量導入や不確実性に起因する系統混雑が課題となり、過酷条件を満たす負荷の想定が困難となっている。そこで本発表ではPVを大量導入した電力系統モデルを作成し、過酷状態を目的関数とした最適潮流計算を行うことで、今後の停電作業計画の検討に資する過酷状況の分析を実施する。
43   大容量太陽光発電システムから出力できる有効・無効電力の最大値の電圧円線図を用いた解析手法
    ※青山知生,津坂亮博,雪田和人,七原俊也(愛知工業大学)
     近年,再生可能エネルギーの利用が推進されており,太陽光発電(PV)装置の設置が増加している。PV装置大量導入時における課題の1つとして,配電系統の電圧変動現象が挙げられており,PV装置からの逆潮流電力が配電系統の電圧上昇・低下を引き起こすことが知られている。また,筆者らは,有効電力の解析手法としてベクトル図上の面積を利用する方法を提案している。
本論文では,ベクトル図上において,これまでとは違う面積に着目することで,面積の値がそのまま有効電力,無効電力として表せることを明らかにし,その際の各有効電力,無効電力の最大値を求めた。
44   PV大量導入時の電力系統における多目的運用最適化に関する検討
    ※秋山航,加藤大樹,森友輔,若尾真治(早稲田大学),山嵜朋秀,豊嶋伊知郎,犬塚直也(東芝エネルギーシステムズ株式会社)
     本研究ではPVの大量導入を想定した電力系統を対象とし、潮流最適計算とε制約法による多目的の運用最適化を検討している。具体的には燃料費・CO2排出量・送電損失を対象にパレート解を算出し、異なる目的関数間の相関等について分析を行い、対象とする最適化問題の特性を分析する。また、分析結果に基づき、さらなるPV導入が想定される系統の運用最適化に資する情報抽出を検討する。

セッションA4(10:40-12:00):太陽光発電システム(安全性)

45   種々の文献データに基づくLiB劣化モデルの作成と住宅負荷想定時における理論劣化モデル式との違い
    ※小川雄気,松尾廣伸(静岡大学)
     LIB電池性能に関する種々の文献データを収集し、主要な劣化因子特性に対しフィッティングを行った。結果、劣化因子のFECは指数関数、温度はアレニウス式と逆アレニウス式の合成関数、Cレートは3次関数を持つことが確認でき、これらを再現した相対誤差10.9 %の劣化モデルを作成した。本モデルと文献記載の理論モデルを用いて、一般住宅を想定した15年充放電シミュレーション行い、総放電量と劣化率の比較を行った。
46   インピーダンス計測による太陽電池ストリングの故障検出技術 -太陽電池モジュールのインピーダンス調査-
    ※河村健一,栗原勇斗,山木壱馬,西川省吾(日本大学)
     本研究の目的は太陽電池ストリングのインピーダンスを計測することにより,ストリング内で発生した故障の種類と程度を検出する技術を開発することである.本稿では太陽電池モジュールのバイパス回路の開放故障の検出についての実験結果を報告する.
47   PVストリングにおける絶縁抵抗1分値の測定およびその推定
    ※池田一昭,大関崇(産業技術総合研究所)
     太陽光発電設備の保守点検等で実施される太陽電池モジュールストリングの絶縁抵抗測定において,自己バイアス法を用いて高抵抗領域を高精度で測定するための条件を抽出した結果を報告する.また,自己バイアス法を活用して短時間の対地電圧測定から絶縁抵抗1分値を推定する手法,および実測定で手法の検証を行った結果について報告する.
48   I-Vカーブを用いたニューラルネットワークによるPVシステムの不具合診断
    ※田中明,崔錦丹,植田譲(東京理科大学)
     太陽光発電(PV)の主力電源化に伴い,PVシステムを安全かつ効率的に長期運用していくことが必要不可欠である。そのため,システムの不具合検出が重要となる。本研究では,PVシステムの不具合を高精度に判定するため,各ストリングI-Vカーブから特徴量を抽出し,ニューラルネットワークを用いてPVシステムの不具合を判定する手法を提案する

セッションA5(14:40-16:00):太陽光発電システム(発電量予測Ⅱ)

49   全球アンサンブル予報システムにおける日射の予報大外しと大気鉛直層の予報誤差の関係性の分析
    ※高松尚宏,中山俊太朗,中島虹,大竹秀明,大関崇,山口浩司(産業技術総合研究所)
     日本では太陽光発電(PV)の導入量が多いことから、電力系統の安定運用のための、太陽光の予測技術の発展が重要となる。本研究では、PV発電量の予報大外しの発生を抑制することを目的として、全球アンサンブル予報システムについて日射予報と大気鉛直層の予報誤差を分析することとした。ラジオゾンデ観測値に基づいた分析から、予報大外しの発生時におけるシステムの大気鉛直層の表現について統計的な評価を行った。
50   GISおよび気象データを用いて日陰損失と天候を考慮したPV発電広域ポテンシャルの時空間推定モデルの開発
    ※崔錦丹,五十嵐大珠,植田譲(東京理科大学)
     本研究は高層ビルが多い東京新宿区を対象に、日影損失と天候を考慮した広域太陽光発電ポテンシャルの時空間モデルの開発を目的とする。物理モデルで把握が難しい日影損失をGISの全天可視領域アルゴリズムを用いて把握し、GISでは快晴日の日射量解析しか行えないため気象観測データと組み合わせて天候を考慮した発電量推定を行うことを提案した。今後、地域防災性を考慮したコミュニティ抽出と最適潮流計画検討の基礎資料になる。
51   両面PVモジュールの発電量推定のための天空率への天気の影響
    ※五藤篤司,重信颯斗,髙橋明子,伊藤雅一(福井大学),大関崇(産業技術総合研究所),Kyungsoo Lee(Tech University of Korea)
     現在、カーボンニュートラル実現に向けてPVの導入が推進されており、特に両面PVが注目されている。しかし、両面PVの裏面の推定において、従来の推定手法では実際よりも過大に推定してしまう。そのため,天空散乱成分にモジュールの天空率、地面反射成分に影と影の天空率を考慮することを提案する。本稿では、快晴日と曇天日で推定精度の比較を行い、天空率考慮への天気の影響を検討した。
52   営農型太陽光発電における水稲収量予測機能の開発
    ※舘山聖真,伊髙健治,外崎滉大郎(弘前大学)
     営農型太陽光発電は、農業と太陽光発電の共生をめざすべきであるが、残念ながら法令遵守に則っていない事例も多く見受けられる。事業開始後の変更は多大なコストが発生するため、適正な設置には、設置後の収量と発電量が事前に予測できるシミュレーションが不可欠である。本講演では、稲作と組み合わせた営農型太陽光発電について、パネルの遮蔽効果が収量に与える影響予測機能の開発について紹介する。

セッションB3(9:10-10:10):太陽光発電システム(発電性能評価)

53   SV法を用いた長期的解析による太陽光発電所の劣化傾向および洗浄効果の解析
    宮本渉,植田譲(東京理科大学)
     本研究では、太陽光発電システム高度解析手法(SV法)により、太陽光発電システムの劣化傾向および洗浄効果の解析を行った。SV法では、システムの基礎情報と1分値の測定データを基に発電時の損失要因を11種類に分離・定量化する。本研究では劣化や汚れによる損失に着目し、10年以上のデータの解析により劣化傾向の把握を行った。また、洗浄により劣化や汚れによる損失が1~5%程度回復し、洗浄の有効性も解析した。
54   都市の建物表面における太陽光発電の評価手法の開発
    ※川島智也,井原智彦(東京大学),山口和貴(東京電力ホールディングス株式会社),高根雄也(産業技術総合研究所)
     都市の建物表面での太陽光発電の評価において、従来手法では建物の陰や反射の入射光量への寄与に加え、周囲との熱収支による温度への影響の考慮が十分でないという課題がある。本研究では、都市気候・ビルエネルギー連成モデルを用いて、上記課題を解決した評価手法を開発する。発表では、開発したモデルを東京23区に適用し、年間の発電量やエネルギー需給等を評価した結果を報告する。
55   Predictive Modelling of Electrical Load: Analyzing the Impact of Weather and Time on Energy consumption
    ※Mutalib Atila Elivan,松尾廣伸(静岡大学)
     非逆潮流許容下の商工業建築物における太陽光発電システム導入量の最適化を目的とし、まず、大学の既往負荷データと気象変数(温度、湿度、風速、水平面全天日射量)の関係を分析し、関係式を導出した。次いで、その関係式を用いた負荷予測値と実負荷を比較した。その結果、気象条件に対して、概ね10%程度以内の誤差で推測できるものの、春や秋などの穏やかな季節には高めの値を、夏や冬には低め値を予測する傾向があった。

セッションB4(10:20-12:00):太陽光発電システム(応用技術Ⅱ)

56   Numerical Optimization of PV/Inverter Overload Rates for Rooftop PV System Design in Thailand
    ※チャムナンワット スッパナット,富本剛史,チャーン チャンシッティチョーク,鈴木政司(株式会社FD)
     Nowadays, energy plays an important role in human daily life. Renewable energy is one way to encounter climate change, especially solar energy. In this literature, the optimal conditions of the overload rate were determined. The overload rate was defined as the PV/Inverter ratio. This study assumes a location in Thailand, a country with significant solar irradiance and a growing interest in renewable energy as an alternative to fossil fuels. The overload rate ratio was optimized based on energy generation and profit earned for PV system sizes of 300 kW, 500 kW, and 1000 kW. The results show that an overload rate of 111% represents the highest energy generation, while an overload rate of 118% demonstrates the highest profit earned. This overload rate could be used as a guideline for designing PV (Photovoltaic) systems in Thailand.
57   ELTRESを用いたIoTによるソーラーカー用テレメトリとエネルギーマネジメント
    ※藤澤徹,須藤康裕,永島岳人(神奈川工科大学)
     2023年と2024年のWGC秋田ソーラーカーラリーにおいて走行する車両の情報を取得するためにLPWA(Low Power Wide Area Network)の一種であるELTRESを用いた結果について報告するとともに、PVによる発電電力とLiBからの消費電力に関するエネルギーマネジメントに関して考察を試みる。
58   PVEVの開発(第2報)
    ※水野英範,棚橋克人,髙島工,大関崇(産業技術総合研究所),廣田壽男(産業技術総合研究所/早稲田大学)
     PVを搭載したEV(PVEV)は、今般のカーボンニュートラル化の推進・運輸部門のCO2排出量削減に貢献できるものと期待される。我々は、昨年度の研究会において、コミュニティバスとしての利用・実証走行を想定したバンタイプ(10人乗り)PVEVの開発について報告した。本発表では、同車両を福島県内山間地で長期運用(1年間)した結果について報告する。
59   人工林を対象にしたPV設置ポテンシャルの算出と階層分析法(AHP)を用いた適地抽出
    ※高橋沙里,重信颯人,髙橋明子,伊藤雅一(福井大学),吉富政宣(有限会社吉富電気),桶真一郎(津山工業高等専門学校)
     太陽光発電(PV)を山地に設置することは,景観悪化・土砂災害等の問題があるが,カーボンニュートラルへ向けたPVの主力電源化には更なる導入が必要である。本研究では収穫期を過ぎた人工林に着目し,景観を損なわず,環境・生態系を涵養するPVの設置方法の検討を行っている。ここではGISとAHPを用いて,様々な評価基準を設けながら,福井県の設置ポテンシャルの評価を行ったため報告する。
60   人工林へのPVシステム設置による半自然草原の回復と維持
    ※桶真一郎,菅野瑞貴(津山工業高等専門学校),高橋沙里,伊藤雅一(福井大学),吉富政宣(有限会社吉富電気)
     植林後50年以上が経過した人工林は,CO2吸収力が衰えているばかりか,生物多様性の観点からも負の影響がある。そのような人工林を伐開しその一部にPVシステムを設置することは,半自然草原の回復に繋がると言われている。本研究では,いくつかの都道府県において人工林へのPVシステムの設置により回復が見込まれる半自然草原の面積を計算するとともに,PV発電電力の売却益が環境保全活動にもたらす影響を調べた。

セッションB5(14:40-16:00):気象・地球環境

61   太陽光発電における積雪の影響
    ※小林隆久(気象庁気象研究所/名古屋大学),増田和彦(気象庁気象研究所),橋本篤(一般財団法人電力中央研究所)
     積雪地域における太陽光発電は、パネル上の積雪により発電効率が減少する一方、地面反射により効率上昇が期待できる。本発表では数値計算に積雪影響を計算、発電量予測向上や、設置条件による発電量への影響を調べた結果を報告する。
62   気象データプロダクトの日本における太陽エネルギー資源量評価への利用可能性
    ※渡邊武志,岡和孝,肱岡靖明(国立環境研究所)
     大気再解析データは気象モデルシミュレーションと気象観測情報の同化技術により作成される。広い領域を対象としたデータ欠損の無い長期間のデータが得られる利点を持つが、データに誤差が含まれるという問題がある。複数の大気再解析データから得られる地上日射量を対象としデータの精度を解析し、それらのデータの日本における太陽エネルギー資源量評価へ利用可能性について議論をする。
63   日射量の数時間先予測に関する信頼度情報作成方法の検討
    ※宇都宮健志,澤田真宏,佐々木潤,岡田牧,山口浩司(一般財団法人日本気象協会)
     著者らはこれまで気象衛星画像を用いた短時間先の日射量予測モデルの開発を進めてきた。本研究では、日射量予測モデルの信頼度に関する確率的情報として、分位点回帰による信頼幅作成方法の検討を行った。分位点回帰に使用する変数および手法の違いが、信頼幅の滞在率、区間幅、逸脱幅の大きさに与える影響を調査した。
64   海水温上昇と酸性化によるCO2逆流が加速する地球温暖化と大地震多発化
    ※鈴木高広,鈴木聖生(近畿大学)
     海洋のCO2吸収力が低下し温暖化が加速している。CO2濃度と気温の関係を調べたところ、このところの猛暑は異常ではなく、CO2濃度に依存した正常な気温であることが明らかとなった。一方、1月の能登半島地震や8月の日向灘地震など、温暖化により多発化する大地震のメカニズムを解析した結果、東京都市荷重と海水位の影響で地下のストレス流路が変化し、東京直下大震災や南海トラフ大地震の発生確率は極めて低いことが示唆された。

セッションC3(9:10-10:30):省エネルギー建築設備Ⅰ

65   ZEB実現のための自然エクセルギー利用システムの最適設計の検討─太陽熱利用システムのエクセルギー評価─
    ※伊澤康一(福山大学),宋城基(広島工業大学)
     本研究では、実建物を対象としてエクセルギー概念による建築設備システムの最適な設計を目的とする。低質エネルギーである熱と高質エネルギーである電力・化石燃料が出入りする建築設備システムにおいて、回収するエクセルギーよりも投入するエクセルギーの方が大きくならない最適運用条件を見出す。本報では、太陽熱利用システムを対象として、実測値に基づいて構築した計算モデルを用いて実施したシミュレーション結果を述べる。
66   積雪寒冷地におけるV2Hを導入したオフグリッド住宅に関する研究 その1 ハトヤマハウスの概要
    ※古野善昭(1級建築士設計事務所 エフプラン),福見宏徳(札幌ベニヤ商会),阿部佑平,佐々木優二(北海道立総合研究機構 北方建築総合研究所)
     住宅の脱炭素化促進に向け、太陽光発電パネルの設置が推進されている。太陽光発電の自家消費率を高める方法として、Vehicle to Home(V2H)があるが、積雪寒冷地での運用実態は十分明らかにされていない。本研究では、積雪寒冷地でV2Hを導入したオフグリッド住宅について、エネルギー消費量や使いこなしの実態を調査した。その1では、対象住宅の概要を示す。
67   積雪寒冷地におけるV2Hを導入したオフグリッド住宅に関する研究 その2 ハトヤマハウスの電力需給分析
    ※阿部佑平,佐々木優二(北海道立総合研究機構北方建築総合研究所),古野善昭(1級建築士設計事務所 エフプラン),福見宏徳(札幌ベニヤ商会)
     住宅の脱炭素化促進に向け、太陽光発電パネルの設置が推進されている。太陽光発電の自家消費率を高める方法として、Vehicle to Home(V2H)があるが、積雪寒冷地での運用実態は十分明らかにされていない。その2では、前報(その1)で報告したハトヤマハウスにおける電力需給の分析結果を報告する。
68   積雪寒冷地におけるV2Hを導入したオフグリッド住宅に関する研究 その3 オフグリッドを実現するための使いこなし
    ※佐々木優二,阿部佑平(北海道立総合研究機構北方建築総合研究所),古野善昭(1級建築士設計事務所 エフプラン),福見宏徳(札幌ベニヤ商会)
     住宅の脱炭素化促進に向け、太陽光発電パネルの設置が推進されている。太陽光発電の自家消費率を高める方法として、Vehicle to Home(V2H)があるが、積雪寒冷地での運用実態は十分明らかにされていない。その3では、積雪寒冷地でV2Hを導入したオフグリッド住宅を対象に、オフグリッドを実現するための冬期の使いこなし実態を報告する。

セッションC4(10:40-12:00):省エネルギー建築設備Ⅱ

69   Application of an Integrated Design Tool for Ground Source Heat Pump Systems: Performance Analysis and Optimization(地中熱ヒートポンプシステムの統合設計ツールの応用:性能分析と最適化)
    楊坤寧,葛隆生,長野克則(北海道大学)
    Ground Source Heat Pump (GSHP) systems utilize the ground’s thermal properties for space heating and cooling, offering significant potential as a renewable energy technology. Our lab developed an integrated design tool that allows for the precise selection of GSHP systems based on a building’s thermal load and HVAC data. Hosted on a cloud platform, the tool allows for parameter settings, simulations, and result visualization. Using this tool, we designed a GSHP system for an energy-efficient building and conducted long-term operation, assessing its energy performance and analyzing the effects of borehole spacing and cooling tower integration on system efficiency, finally determining the optimal design solution.
70   太陽電池パネルの日射遮蔽効果に関する研究 第6報 パネル内部発熱の評価法の検討
    村田泰孝(崇城大学)
     これまでの研究で、太陽電池パネルの熱収支を検討するにあたり、発電に伴う発熱を考慮する必要があることが示唆されている。この発熱量を評価するために、太陽電池のI-Vカーブを様々な日射量の下で計測し、等価回路モデルを用いて内部抵抗を推計、パネル内部発熱量を評価した。その結果を用いパネルの熱収支を検討した結果を報告する。
71   雨水を滴下した加湿エレメントによる室外機間接蒸発冷却が住宅冷房に与える影響の研究
    ※南雲茜(日東商事株式会社),高橋達(東海大学)
     本稿では、夏季における雨水によるエアコン外機の間接冷房の省電力効果を把握するための実験結果と数値シミュレーションについて述べている。その結果、以下の結果が得られました。1)室外機の吸引部にセットした加湿エレメントに雨水を散布した場合、最大で散水なしの場合より圧縮機の出口温度が6°C低下した。これにより、エアコンの使用電力量は最大で15%減少した。2) 加湿エレメントの飽和効率は0.78と推定され、ドライミストの0.3~0.5より大きい。
72   HEMSにおける蓄電池充放電の最適化に関する研究
    ※田邊匠,長野克則,劉洪芝,党柏舟(北海道大学)
     HEMSにおいて蓄電池充放電の最適化は買電量を最小にするために必要な要素である。蓄電池充放電の最適化を行うためには少なくとも1〜2日の太陽光発電量を正確に予測することが求められる。
本論文ではLSTM、クラスタリングを用いたオープンループで1〜2日の太陽光発電量を予測し、実際に行った太陽光発電量と比較してどれほどの精度であるかを示す。また、MILPを用いた最適化によりどれほど買電量を抑えられたかを示す。

セッションC5(14:40-16:00):省エネルギー建築設備Ⅲ

73   天井パネル式放射冷暖房による夏期・冬期の室内温熱環境の特徴把握に関する実測 その1.実測概要と夏期の高温冷水放射冷房時の温熱環境実測結果
    ※淺田秀男,二村宏康(愛知淑徳大学)
     本研究の目的は、天井パネル式の放射冷暖房を備えた実在の空間において創出さ れる室内温熱環境の特徴を実測により把握すること、また、天井パネル式の放射 冷房の導入を検討する際の知見を得ることである。本報その1では、まず実測対 象の空間と天井放射冷暖房の概要について述べ、次に、夏期に天井放射冷房時の 行なった場合の冷水温度の違いや日射遮蔽の有無による温熱環境の違いや特徴を 分析した結果について述べた。
74   天井パネル式放射冷暖房による夏期・冬期の室内温熱環境の特徴把握に関する実測 その2.冬期の低温温水放射冷房時の温熱環境実測結果
    ※二村宏康,淺田秀男(愛知淑徳大学)
     本研究の目的は、天井パネル式の放射冷暖房を備えた実在の空間において創出さ れる室内温熱環境の特徴を実測により把握すること、また、実測結果を解析する ことにより天井パネル式の放射冷房の導入を検討する際の知見を得ることであ る。本報告はその1に引き続き、冬期に低温温水を用いて天井放射暖房を行なっ た場合の室内温熱環境を実測し分析した。その結果、温水温度を変えた場合の室 内温熱環境の違いや特徴を把握することができた。
75   PEFC型燃料電池の排熱を除加湿と給湯に併用したシステムの省エネルギー性評価
    ※水野敬太,太田勇(株式会社ミサワホーム総合研究所),山本浩平,北西博(パナソニック株式会社)
     夏季・中間期において排熱利用率が低下する家庭用固体高分子形燃料電池(PEFC)コージェネレーションシステム(EF)の排熱を室内の調湿に利用し、年間を通して室内湿度環境をコントロールすることで、建物の省エネ性・快適性の向上が期待できる。本報では、排熱を除加湿に使用することによるEFの省エネルギー性評価について報告する。
76   環境試験用自然環境調和型PV/Tソーラーパネルの開発及び性能評価
    ※柿澤拓真,寺島康平,長井達夫(東京理科大学)
     太陽光を熱・電力に同時に変換し、自然環境への熱放射を抑制するPV/Tソーラーパネルの実用化に向けて、パネル構造の最適化や集熱・発電量の予測精度を向上させるため熱モデルの作成が必要となる。そこで、諸条件を変更して環境試験ができるように、既往研究の構造を参考にして新たに環境試験用PV/Tソーラーパネルを開発した。本研究では、このパネルの性能について報告する。

セッションD3(9:10-10:30):ZEB/ZEH(シミュレーション)

77   既存体育館のZEB改修検討を目的としたCFD解析手法の検討
    ※郭暢,酒井孝司(明治大学)
     現在,明治大学環境分野では,既存体育館のZEB改修に取り組んでいる。改修計画では,断熱性向上と空調機器の小型化を予定している。体育館全体のCFD解析は計算負荷が過大であるため,モーメンタム法を用いた計算負荷の低減を試みる。本研究では,体育館内の詳細予測とモーメンタム法を適用した簡易解析を行い,非等温気流場におけるモーメンタム法の有効性について検討を行った結果について報告する。
78   太陽光発電・蓄電池・電気自動車を連携させたZEH住宅の実証 数値シミュレーションによる居住者の世帯構成と住宅規模の違いに関する分析
    ※野村颯太,三田村輝章(前橋工科大学),佐藤廉(株式会社石井設計)
     前報では、太陽光発電、蓄電池、電気自動車を組み合わせたシステムを搭載したモデル住宅を対象に数値シミュレーションモデルを作成し、電気自動車の容量や走行の有無などの条件を変更した場合の電気の自給自足への影響について報告した。本報では同シミュレーションモデルを用いて、居住者の世帯構成や住宅の規模などの違いによる影響について検討した結果について報告する。
79   地理空間情報による広域建物群のエネルギー予測システムの構築 その7 建物形状の自動判別と太陽光パネル設置可能性の分析
    ※鈴木小夏,森太郎,大沢飛智(北海道大学)
     地域レベルでの脱炭素化の重要性が増大する中、広域かつ詳細なエネルギー量の算出が不可欠となっている。本研究では、地理空間情報を活用し、広範囲に分布する建築物のエネルギー消費量及び太陽光発電量を高精度に予測するシステムの構築を目指している。本報告では、航空写真を用いて自動的に建物形状を判別し、建物の形状データを基に太陽光パネルの設置可能性と発電量を分析する。
80   地理空間情報による広域建物群のエネルギー予測システムの構築 その8 自動生成モデルの効率化と太陽光発電導入効果評価
    ※大沢飛智,森太郎,鈴木小夏(北海道大学)
     脱炭素社会の実現に向けて、地域単位でのエネルギー収支の詳細な把握が必須となっている。本研究では、地理空間情報を活用し、都市部の建築物群におけるエネルギーの消費と生成を高精度に予測するシステムの開発に取り組んでいる。本報告では、建築物の自動生成モデルにおける計算負荷の低減手法を提案するとともに、太陽光発電量がエネルギー消費量をどの程度相殺し得るかを定量的に分析する。

セッションD4(10:40-11:20):太陽熱暖冷房・蓄熱システム

83   太陽熱駆動アンモニア吸収冷凍機の冷却水温度低下によるGAXサイクル化
    ※青山伊吹,秋澤淳,諏訪部泰徳(東京農工大学)
     太陽熱で駆動するアンモニア吸収冷凍機で製氷する季節間蓄熱システムを対象とした.吸収冷凍機の高効率化のために,冷却水温度を下げることによりサイクル内で生じた吸収熱を加熱再生に利用するGAXサイクル化が可能であることを確認した.性能をシミュレーション解析によって求めた結果,通常の吸収冷凍サイクルよりもCOP(成績係数)が夏期運用では30%以上,冬期運用では20%以上向上することを示した.
84   多孔性マイクロ構造層の形成による複合冷却メカニズムの創出
    ※佐藤昂洋,亀谷雄樹(千葉工業大学)
     近年、気温上昇、エネルギー資源の枯渇が問題となっており、エネルギーを消 費しない冷却技術が注目されている。本研究では、大気の窓における高い放射 率をもつポリマーであるPDMSを多孔質化した多孔質PDMSを用いた熱放射層と、 高い吸水性をもつ多孔質ポリマーシートを用いた水輸送層から成るマイクロ構 造層を形成し、放射冷却と水の蒸発による熱輸送とを共存させた複合冷却メカ ニズムの確立を行う。

セッションD5(14:40-16:00):断熱・パッシブ・温冷感Ⅱ

85   光透過型真空断熱材の芯材変更に対するガス放出と断熱性能の実験的検討
    ※木村奏人,葛隆生,宮田天和,長野克則(北海道大学),関根賢太郎,張本和芳,渡邉深雪(大成建設株式会社)
     本研究では、光透過型真空断熱材の開発を目的として、芯材を変更した蓄積法の実験や、真空層を複層とした蓄積法の実験を実施した。さらに、複層やメッシュ型芯材の熱伝導率測定実験を行い、断熱性能の最適化を図った。これらの結果をもとに、断熱材の性能の向上および実際の建物への適用に向けた評価を行った。
86   公営住宅に適用したダイナミックインシュレーション窓の性能評価に関する研究 -数値シミュレーションによる室内温熱環境と冷暖房負荷の評価-
    ※木村秀斗,三田村輝章(前橋工科大学),大浦豊,藤園武史,岡村大輔(三協立山株式会社)
     ダイナミックインシュレーション窓は、二重窓の内部に空気を通気することで窓からの損失熱を回収し、換気しながら高断熱を実現できる特徴がある。本研究では、これを公営住宅の断熱改修として適用し、これまで動的な熱貫流率Udyn値や日射熱取得率ηdyn値について検討を行ってきた。本報では、数値シミュレーションにより各断熱改修条件下における室内温熱環境と冷暖房負荷の算出を行い、比較した結果について報告する。
87   光透過型真空断熱材の封止後の圧力上昇を抑制する製造プロセスに関する実験的検討
    ※宮田天和,葛隆生,木村奏人,長野克則(北海道大学),関根賢太郎,張本和芳,渡邉深雪(大成建設株式会社)
     本研究では、建築物の窓の断熱材として簡易に施工できる光透過型真空断熱材(TVIP)について、圧力上昇を抑えた製造プロセスを確立するために蓄積法を応用して実験装置を構築した。実験の結果、真空封止後30分経過時に1 Pa以下に抑えられる条件として31条件が得られ、圧力上昇を抑制するための追加コストが最も低い条件は、ゲッター材を使用せず、50℃で加熱しながら48時間真空引きした場合の169円であった。
88   CFD解析による植物工場内の生育環境把握と省エネ性能評価
    ※井上伶菜,酒井孝司(明治大学)
     気候変動不安定化に伴う食物不作や生育不良が大きな問題となっている。解決方法の一つとして植物工場が挙げられる。植物工場では,安定した生産が可能となる反面,照明・空調負荷の増大が問題となる。本研究では,明治大学内の植物工場を対象に,生育環境に優れ、かつ省エネな空調方式の提案を目指して研究を行っている。本報では,既存の植物工場をCFDで再現し,断熱性向上による省エネ効果について検討した結果を報告する。

セッションE3(9:10-10:10):エネルギー貯蔵・水力発電

89   電解質含有メッシュリインフォーストゲルによる金属捕集発電システムの耐久性向上
    ※張晨陽,亀谷雄樹(千葉工業大学)
     近年、マイクロロボットが様々な分野で大きな可能性を示しており、効率的で持続可能な電源を提供することが課題となっている。本研究では、金属空気電池の原理を応用し、エネルギーハーベスト技術やCTB技術を使用して、発電システムの有効体積を増加させることで、エネルギー密度の向上を目指す。本発表では、金属メッシュを用いて電解質の機械的強度を高めることで、発電システムの耐久性を向上させる検討について報告する。
90   気泡スキャン付着力測定による液中における表面性状の評価
    ※森川昂哉,亀谷雄樹(千葉工業大学)
     近年、光電気化学反応による水素生成が注目されている。しかし、生成された気泡が電極や窓材表面に付着し効率低下を引き起こすため、電極表面の構造改良や親水性コーティングによる気泡除去が検討されている。本研究では、表面の気泡付着力を定量的に評価するため、液中で表面全体を測定することができる付着力測定方法を提案する。その方法を用いて、様々な種類の表面で測定を行った。
91   スイング式胸掛け衝動水車の出力特性
    ※本橋元,宍戸道明(鶴岡工業高等専門学校),内山知実(名古屋大学),池田敏彦(信州大学),岡山朋子(大正大学),高牟礼光太郎(信州大学)
     胸掛け衝動水車では導水路と羽根車の間から異物が流出するため,ゴミによるトラブルはない.一方,流出スペースのために,羽根車への水流の流入位置は水量に依存し,増水時には水流流入位置が羽根車上方に移動し,増水の割には出力が高まらなかった.そこで,出力増のために,水流に押されて羽根車が下流側にスイングするように設置することを考案し,実水路でその効果を検証した.

セッションE4(10:20-12:00):太陽電池セル・モジュール Ⅰ

92   カーボン系多層多孔質ペロブスカイト太陽電池におけるRbCsCH(NH2)2PbI3光吸収体の結晶化制御
    ※塩木貴也,大下舜介,泉本直也,伊藤省吾(兵庫県立大学),辻流輝(筑波大学)
     カーボン系多層多孔質ペロブスカイト太陽電池は低コスト且つ大気中で製造可能であり,優れた性能安定性を示す.この太陽電池は開発当初から5-アミノ吉草酸よう化水素酸塩を添加したCH3NH3PbI3が一般的な光吸収材料として用いられている.しかし,そのIV特性は電圧掃引速度によって大きく変化し,測定条件によっては性能が過大評価される懸念がある.そこで本研究では代替の光吸収材料としてRbCsCH(NH2)2PbI3を検討し,その導入プロセスの最適化を行った.
93   静電噴霧法を用いたオールウェットプロセスに向けた有機薄膜太陽電池の成膜技術の検討
    ※篠田佳依,江頭雅之,渡邊康之(公立諏訪東京理科大学)
     有機薄膜太陽電池(OPV)の基礎研究では、プロセス技術として一般的にスピンコート法が用いられている。しかし、この方法では基板上に溶液を塗布して高速回転させることで薄膜を形成するため、溶液は約99%が廃液となるばかりではなく、パターニングが困難であり、全層を成膜することは容易ではない。そこで本研究では、産業応用を目指し、全ての層をウェットプロセスである静電噴霧法でOPVを作製し、発電特性について評価を行った。
94   太陽電池モジュールの残存寿命推定方法
    ※高野和美(株式会社アイテス),有松健司(東北電力株式会社)
     太陽電池モジュールが劣化する原因としてはEVAの加水分解による有機酸の発生が報告されている。樹脂製造過程ではEVA分解を抑制する目的で組成を調整しており、その一つとして紫外線吸収剤を添加している。紫外線吸収剤は太陽電池モジュールの稼働に伴い、少しずつ分解され消耗する。そこで、稼働中の太陽電池モジュールのEVAに含まれる紫外線吸収剤の消耗具合をサービスライフとして推定する方法について報告する。
95   薄膜PVの接着工法における接着剤塗布パターンの違いがPV温度と発電量に与える影響
    ※小沼大河,馬場好孝,村上礼雄(東京ガス株式会社)
     薄膜PVの接着工法では、被着材の熱伝導率が低いと、PV背面の熱が逃げにくくなるため温度が上昇し、発電量が低下することを確認している。しかし、PV温度に影響する要因として、被着材を通しての熱伝導だけでなく、PV背面の対流も考慮する必要があるため、本研究では、接着剤の塗布パターンの違いがPV背面の対流に与える影響と、それに伴うPV温度と発電量の変化を実験と解析の両面から評価した。
96   フレキシブル太陽電池の材料劣化評価
    ※指宿洋介(東京電力ホールディングス株式会社)
     軽量で柔軟性をもつ太陽電池(フレキシブル太陽電池)は、壁面への設置など適用場所が広がる可能性があり、近年注目されている。フレキシブル太陽電池を構成する材料は、従来の太陽電池と異なる材料であり、材料劣化を引き起こす環境因子も異なると考えられる。本研究では、紫外線照射による加速劣化試験を実施し、フレキシブル太陽電池の材料の劣化を評価した結果について報告する。

セッションE5(14:40-16:00):太陽電池セル・モジュール Ⅱ

97   キセノンフラッシュランプを用いた太陽光発電モジュール不具合検出装置の最適キャパシタ容量の検討
    ※倉持汰翔,田中正志(茨城大学),乾義尚(滋賀県立大学)
     著者らはキャパシタとフラッシュランプを利用した太陽光発電モジュール不具合診断装置を提案している。本研究では,まず,その装置で太陽光発電モジュールに発生する不具合を検出するために最適なキャパシタ容量をシミュレーションにより検討した。さらに,実際に診断実験を行うことにより,シミュレーション結果の妥当性を確認した。以上の計算と実験により,著者らの不具合診断装置のキャパシタ容量決定指針を明らかにした。
98   超音波洗浄機内部の音圧分布の測定とシミュレーションに基づくPVモジュールの超音波洗浄の検討
    ※小川大士,田中正志(茨城大学),乾義尚(滋賀県立大学)
     著者らは,PVモジュールの工業的な洗浄手法として超音波洗浄を提案してきた。本研究では,PVモジュールを超音波洗浄する洗浄機内部の音響シミュレーションを行うことにより超音波洗浄機内部の音場分布をシミュレーションするとともに,その妥当性を音圧の測定を行うことにより確認した。さらに,超音波洗浄機内部の音場分布の計算結果を用いてPVモジュールの洗浄に必要な音圧条件を明らかにした。
99   PVM・バイパス回路の開放故障検出技術のシミュレーション検討
    ※千脇伸仁,西川省吾(日本大学)
     バイパス回路の開放故障位置を検出する技術開発を目的として,筆者らはこれまで実証試験によりストリングに周期性のある電圧を印加し,赤外線カメラでモジュール温度の変化を観察する方法で,低日射でも故障位置を検出する技術を開発してきた。本論文では,シミュレーション検討により,ストリングの印加電圧の大きさ,クラスタIV特性の違い及び日射強度が故障検出に与える影響を調査したので報告する。
100   ワイドギャップCIGS/ZTO太陽電池の特性評価
    ※西田竹志,西永慈郎,上川由紀子,石塚尚吾(産業技術総合研究所)
     現在、従来CdSバッファ層を用いたCIGS太陽電池の最高効率は、Eg=1.15 eV で得られているが、理論的には Eg=1.4-1.5 eV において最高性能が期待される。しかし、Eg≧1.3 eV においてCdS/CIGS界面はcliff型の伝導帯オフセットを持つため、キャリアの再結合が大きく開放電圧が低下する。本研究では、Zn1-xSnxOをワイドギャップバッファ層として応用し、ワイドギャップCIGS薄膜太陽電池の開放電圧および変換効率の改善を目指した。